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農・人・くらし

NPO法人 農と人とくらし研究センター コラム

カテゴリー「■ リレーコラム」の記事一覧

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こんにちは

suisen.jpg 福井の井上です。
 12月に入って、北陸特有の時雨模様が続いております。でも、関東などの乾いた冬よりも私にとっては過ごしやすく、心が落ち着く季節です。

 先日、私の所属する事務所では、普及外部評価が実施されました。
 これは、平成10年度から始められたもので、初めは普及のシンパづくりもねらいでしたが、現在三巡目ともなると、発表者になった普及員の資料づくり・発表力をつける場とはなるものの、準備すること自体、なにやらおっくうになってきております。

 外部評価のもとになっているものが、普及計画ですが、農業改良助長法にも裏付けられているように、普及指導員に課せられた仕事への意思表明であり、農家と普及指導員(関係機関も含む)との約束です。そして、市町の地域計画に(これは、農家・農業者、農業団体、勤労者、中小商工関係者、大企業、公共機関にかかるモロモロのことが複雑に絡み合って作り出されるものですが)結びつくものです。

 昭和40年代に出版されたものだと思うのですが、「これからの普及」を論じたものに、栽培や農家生活にかかる技術指導と地域のコーディネイトをする役割が書かれており、特に地域コーディネイト力が大切と記されておりました。

 この頃から生活担当を中心に、地域コーディネイトといった仕事がなされ、様々な情報収集・活用力、そして関係する様々な機関、そして地域の人々、それらを結びつけて、地域の課題解決を図ってきた・図ろうとしてきました。このコーディネイト力は各人のもつ「勘」も大きな要素ですが。

 しかし、時の移ろいは、そうした地域づくりにかかる取組みに対しては、普及の成果とされるものでなく、時として、普及の関わりは明確にされないものとなりましたし、技術にかかる取組みは有料化していけばよいではないかという議論にふりまわされようになりました。

 また、JAの営農指導員に力を貸し、栽培技術指導といった対外的には極めて理解しやすい仕事以外は評価されにくくなりました。

 県内で一番の農業生産額を(他県に比べたらさほどでもないのですけれど)誇るような現在の勤務地では特に地域づくりは農業関係との関わりは薄いものとなっているように感じられます。とても大切なことなのに…。
 だれにどう評価されても(されなくても)自分のもてる能力で日々、勤めていくしかありません。

 ただ、一人一人の力量は必要ですが、普及員が持てる個性のみで仕事をする時代ではなくなりました。組織で事にあたっていくしかない時代になっています。
 民主的な組織でかつ強いリーダーシップのとれる管理職のもと、対外的に仕事を進めていくこと、これにつきるのでしょう。

 「つくば」から帰福してから、現実の社会に立ちかえり、ふとつぶやく愚痴でした。
 ちなみに今回の外部評価委員長は福井県立大学 北川太一准教授でした。

H19.12.6

井上照美
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「開発」・暮らし・文化人類学 No.0000-2 ジェンダーと「開発」

shigoto.jpg ジェンダーという考え方は,第3回世界女性会議ナイロビ大会(1985)で登場した。経済活動に女性の参加を促すと同時に地位向上を実現しようと1975年メキシコ大会を第1回として世界的な行動綱領が採択されていった。女性が開発過程に参加しだすと,多くの問題が生じた。日々の生活をどのように,誰が担うのかという問題である。
 アフリカのケニアの首都,ナイロビはその会場であり,ジェンダーの概念が世界の女性たち,共通のテーマとしてはじめてとりあげられたところである。
 経済活動に女性が参加することの重要性が第1回メキシコシティ大会(1975)で採択され,WID(ウィド)という概念が提唱された。WIDは,Women In Developmentの略字で「開発への女性の参加」を意味するものであった。しかし,こうした活動が広まると家事や育児を誰がするのか,という問題が生じた。当初は,就学し始めた,特に女子児童にしわ寄せとなった。家事と小さな子供の世話をするために女子児童が学校を休み,同時に女性の過重労働の問題が深刻になった。家事・育児に男性の参加が大きくとりあげられるようになった。
 この問題において多くの地域では,家事・子供の世話という問題に対して,家族員以外の女性を雇うことで実現してきた。また,一方でアフリカ各地では経済力のある男性は,これまで複数の配偶者をもつこと(複婚 polygamy)を支えてきたが,家事・育児の軽減のために複婚,つまり,一夫多妻制を固定化することも見られるようになった。アフリカばかりではなく,南アジアのネパールの山間部で,ある中年女性は,「経済力がついたので夫は2番目の妻を迎えることができた。これで,宗教活動や地域のボランティア活動ができるようになった」,というのである。このように婚姻の慣習の問題にも開発の影響が起きてきた。
 家事・子供の世話に雇用で対処しようとする方式は,西欧で発達してきた対処方法であり,女性の開発への参加が重要視されて多くの地域で浸透してゆき,女性の社会的地位を向上させていった。スリランカ政府の女性局で,局長以下,多くのスタッフ(ほとんどが女性)に「皆さんの家庭の家事・育児は,どうなさっているのか」とたずねたことがある。経済力のある上級官吏は,3~4人,局の雑務を担当するものでも1人の家事担当を雇っていた。
 確かに,この方法は,女性が社会的に高い地位を確保するのに大きく貢献した。人間開発の年次報告では,人間開発の状況がどこまで伸展したかの数値的指標が用いられている。これを人間開発指標,Human Development Indicators (HDI)という。この指標に付随して各種の指標が用意されており,その中で女性の地位向上の総合指標,「ジェンダー開発指標」Gender Development Indicators (GDI)がある。年次別にGDIの変化を見ると,日本の順位が世界の中で,後退するように見える。これは,多くの国々でのGDIの向上,改善の速度が速いのである。

富田祥之亮

「開発」・暮らし・文化人類学 No.0000-1 「開発」の概念の変化

 「開発」という言葉をカッコでくくり,その意味を文化人類学的に学生諸君と考えていこうという意図で講義をはじめた。5年間続いた。事務の話では,講義は学生たちに好評で,抽選で受講者を決めていたとか。ある学生は,何度も抽選にはずれてしまう,何とかしてほしいといううれしい苦情もいただいた。講義の反応については,機会をあらためて書くことになるだろう。
kaihatu.jpg さて,開発という言葉は,日本語では,ブルドーザーで土地の形状を変えて別の用途に用いる意味が強い。産業的な開発を中心に経済的な土地利用目的の改変である。高速道路網,空港・港湾整備,新幹線網など交通基盤の整備,テクノパークなど企業団地,学園都市,大規模住宅団地などが代表的なものである。農村地域では,大区画農場整備に灌漑排水など機械化に適用できるような整備があった。特に,東海道という日本の経済中枢を結び付けた新幹線は,瀬戸内海を西に走り,東京,横浜,名古屋,京都,神戸,福岡と昔,小学校や中学校の社会科でならった六大都市を結んで,確かに経済の基盤としての役割を果たしてきた。この計画は,開発の速度は落ちたもののさらに伸展しようとしている。経済がこうした大都市中心に展開するなかで現在では,地域格差の拡大が著しくなり,地方にとって地域経済の起爆剤としての新幹線信仰がいまだに強く,延伸に対する期待感が求められている。
 こうした開発現象,経済の規模の拡大による生活の向上は,先進国の発展に関して主流であり,世界経済の基調は,依然として経済のパイを大きくすることに主眼が置かれている。
 この講義を開始した90年代に入ると,世界の開発に対する論調は大きく変化をしてきた。「開発」の意味の変換である。国連開発局(UNDP)が提唱してきた「人間開発(Human Development)」という考え方は,その代表的なものである。英語での開発,デベロップメント development には,人間の能力の発展という意味も含まれており,そちらの意味のほうが強いようだ。その動きは,世界の主流とはならないまでも,発展途上国においては,大きく変化をもたらしてきた。
 これまでの開発は,産業基盤や交通輸送基盤等,経済というパイを大きくするものが優先されていたが,格差は大きくなるばかりであり,貧困問題は深刻化する一方であった。その反省から,新しい開発,人間開発は経済基盤よりも優先しなくてはならないものとして,人間一人ひとりの能力の開発とその能力の活用に重きをおいた考え方だ。 言い換えると,これまでの開発が,人間を外側において社会基盤,経済基盤を対象にしてきたものを,人間を対象に変えて,個々の人びとの,能力発展の意味に変換しようとするものである。このような考え方は,貧困問題と同時に男女間格差の問題としても大きな課題となった。ジェンダーという問題である。

富田祥之亮

「開発」・暮らし・文化人類学 No.0000

tomita001.jpg “「開発」・暮らし・文化人類学”というタイトルは、かつて、放送大学の面接授業で設けていた講義の名称である。現在でも東京農業大学のバイオビジネス研究の大学院で、日本にやってきた留学生諸君を中心に「バイオビジネス人類学特論」の講義を受け持って続けている。
 この面接授業では、開発という用語を「」でくくり、一般的な開発の定義とは、異なる意味を受講生諸君と一緒に考えようとしたものである。授業では、放送大学という性格から、年齢の異なる、様々な経験をもった方々が授業を受けていただいた。中には、国際NGOで現在も活躍されている方、国際協力機構の専門家、青年海外協力隊員だった方、省庁の国際協力担当だった方々などがおられて、授業での討論は、熱の入った議論となり、しばしば、講義をする私が、受講生の議論に説明できないことがあったりした。
 文化人類学は、人間の営みを意味する「文化」を地球上のあらゆる地域、民族、生業形態などをもとに比較研究する学問である。文化は、文化人類学では「生活様式」 way of life あるいは design for living という用語で説明される。
 地球上には、多様な環境の中で、様々な人びとが暮らしており、そこでの暮らし方は、環境、伝統などに依存してはいるものの“よりよい暮らし”を求めて今日を築いてきた。
 このコーナーでは、筆者が歩いてきたわずかな、地球上の人びとの暮らしから学んだことがら、“よりよい暮らし”とはなどをテーマに1枚、あるいは数枚の写真、あるいはつたない私の描いたスケッチなどをもとにフィールドノート、講義ノートをもとに書き記すことにする。

富田祥之亮

農と人とくらし研究センター

Research Institute for
Rural Community and Life
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