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農・人・くらし

NPO法人 農と人とくらし研究センター コラム

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「開発」・暮らし・文化人類学 No.0000-2 ジェンダーと「開発」

shigoto.jpg ジェンダーという考え方は,第3回世界女性会議ナイロビ大会(1985)で登場した。経済活動に女性の参加を促すと同時に地位向上を実現しようと1975年メキシコ大会を第1回として世界的な行動綱領が採択されていった。女性が開発過程に参加しだすと,多くの問題が生じた。日々の生活をどのように,誰が担うのかという問題である。
 アフリカのケニアの首都,ナイロビはその会場であり,ジェンダーの概念が世界の女性たち,共通のテーマとしてはじめてとりあげられたところである。
 経済活動に女性が参加することの重要性が第1回メキシコシティ大会(1975)で採択され,WID(ウィド)という概念が提唱された。WIDは,Women In Developmentの略字で「開発への女性の参加」を意味するものであった。しかし,こうした活動が広まると家事や育児を誰がするのか,という問題が生じた。当初は,就学し始めた,特に女子児童にしわ寄せとなった。家事と小さな子供の世話をするために女子児童が学校を休み,同時に女性の過重労働の問題が深刻になった。家事・育児に男性の参加が大きくとりあげられるようになった。
 この問題において多くの地域では,家事・子供の世話という問題に対して,家族員以外の女性を雇うことで実現してきた。また,一方でアフリカ各地では経済力のある男性は,これまで複数の配偶者をもつこと(複婚 polygamy)を支えてきたが,家事・育児の軽減のために複婚,つまり,一夫多妻制を固定化することも見られるようになった。アフリカばかりではなく,南アジアのネパールの山間部で,ある中年女性は,「経済力がついたので夫は2番目の妻を迎えることができた。これで,宗教活動や地域のボランティア活動ができるようになった」,というのである。このように婚姻の慣習の問題にも開発の影響が起きてきた。
 家事・子供の世話に雇用で対処しようとする方式は,西欧で発達してきた対処方法であり,女性の開発への参加が重要視されて多くの地域で浸透してゆき,女性の社会的地位を向上させていった。スリランカ政府の女性局で,局長以下,多くのスタッフ(ほとんどが女性)に「皆さんの家庭の家事・育児は,どうなさっているのか」とたずねたことがある。経済力のある上級官吏は,3~4人,局の雑務を担当するものでも1人の家事担当を雇っていた。
 確かに,この方法は,女性が社会的に高い地位を確保するのに大きく貢献した。人間開発の年次報告では,人間開発の状況がどこまで伸展したかの数値的指標が用いられている。これを人間開発指標,Human Development Indicators (HDI)という。この指標に付随して各種の指標が用意されており,その中で女性の地位向上の総合指標,「ジェンダー開発指標」Gender Development Indicators (GDI)がある。年次別にGDIの変化を見ると,日本の順位が世界の中で,後退するように見える。これは,多くの国々でのGDIの向上,改善の速度が速いのである。

富田祥之亮
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