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農・人・くらし

NPO法人 農と人とくらし研究センター コラム

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「開発」・暮らし・文化人類学 No.0000-1 「開発」の概念の変化

 「開発」という言葉をカッコでくくり,その意味を文化人類学的に学生諸君と考えていこうという意図で講義をはじめた。5年間続いた。事務の話では,講義は学生たちに好評で,抽選で受講者を決めていたとか。ある学生は,何度も抽選にはずれてしまう,何とかしてほしいといううれしい苦情もいただいた。講義の反応については,機会をあらためて書くことになるだろう。
kaihatu.jpg さて,開発という言葉は,日本語では,ブルドーザーで土地の形状を変えて別の用途に用いる意味が強い。産業的な開発を中心に経済的な土地利用目的の改変である。高速道路網,空港・港湾整備,新幹線網など交通基盤の整備,テクノパークなど企業団地,学園都市,大規模住宅団地などが代表的なものである。農村地域では,大区画農場整備に灌漑排水など機械化に適用できるような整備があった。特に,東海道という日本の経済中枢を結び付けた新幹線は,瀬戸内海を西に走り,東京,横浜,名古屋,京都,神戸,福岡と昔,小学校や中学校の社会科でならった六大都市を結んで,確かに経済の基盤としての役割を果たしてきた。この計画は,開発の速度は落ちたもののさらに伸展しようとしている。経済がこうした大都市中心に展開するなかで現在では,地域格差の拡大が著しくなり,地方にとって地域経済の起爆剤としての新幹線信仰がいまだに強く,延伸に対する期待感が求められている。
 こうした開発現象,経済の規模の拡大による生活の向上は,先進国の発展に関して主流であり,世界経済の基調は,依然として経済のパイを大きくすることに主眼が置かれている。
 この講義を開始した90年代に入ると,世界の開発に対する論調は大きく変化をしてきた。「開発」の意味の変換である。国連開発局(UNDP)が提唱してきた「人間開発(Human Development)」という考え方は,その代表的なものである。英語での開発,デベロップメント development には,人間の能力の発展という意味も含まれており,そちらの意味のほうが強いようだ。その動きは,世界の主流とはならないまでも,発展途上国においては,大きく変化をもたらしてきた。
 これまでの開発は,産業基盤や交通輸送基盤等,経済というパイを大きくするものが優先されていたが,格差は大きくなるばかりであり,貧困問題は深刻化する一方であった。その反省から,新しい開発,人間開発は経済基盤よりも優先しなくてはならないものとして,人間一人ひとりの能力の開発とその能力の活用に重きをおいた考え方だ。 言い換えると,これまでの開発が,人間を外側において社会基盤,経済基盤を対象にしてきたものを,人間を対象に変えて,個々の人びとの,能力発展の意味に変換しようとするものである。このような考え方は,貧困問題と同時に男女間格差の問題としても大きな課題となった。ジェンダーという問題である。

富田祥之亮
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