忍者ブログ

農・人・くらし

NPO法人 農と人とくらし研究センター コラム

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

農地の除染

 福島原発事故により放射能汚染された土壌の除染作業が進められています。表土を削り取るという単純な作業のようです。田畑も同様です。
 いったん放射性物質が大量に降り注いでしまった以上、汚染された土壌を取り除く以外に方法はないのでしょう。仕方のないことだと思います。
 でも、「汚染された土を削り取る」ということがなにを意味するのか、私たちはもう一度よく考えてみるべきだと思います。田畑の土というのは、単に無機物と有機物の混合物ではないのです。親やその親やそのまた親や何代もの農民たちの血と汗と涙を重ねて出来上がった、いわば歴史そのものだと思うのです。
 本紙の前身である「楽農ぐらし」に以前書いたことなのですが、かつて酪農の大先輩だったおばちゃんが、田んぼの基盤整備工事の後でこう話してくれました。「基盤整備の工事でうちの田んぼの上土が○○の田んぼに行ってしまった。取られてしまった。悔しい。あの田んぼには牛の堆肥をせっせと入れてきた。車も行かん狭いあぜ道をリヤカーで運んだ。雨や雪でぬかるんだ時にはソリに乗せて引いて行った。そうやって堆肥で肥やした大事な土がみんな他所の田に乗ってしまった。○○に取られてしまった。悔しい。わしゃ、○○に〈西から風が吹いてきたら、わしの恨みの風と思え!〉と言ってやった。」
 基盤整備工事というのは、あちこちに散らばっている小さな変則的な形の田を出来るだけそれぞれ一ヶ所に集約して四角にして農作業がし易いようにする事業です。だから、自分の田が元の位置に必ずしもなるわけではないのです。このおばちゃんの丹精込めた田のあった位置は○○さんに割り当てられる結果になったのです。仕方のないことですが、おばちゃんのいう「悔しさ」は分かるような気がしました。
 農民にとっての田畑の土はそういう重い意味を持っているものです。歴史です。文化です。いのちの連なりです。
 そういうものを放射能で汚したのだということを、東電も政治家も役人も財界人も、ちゃんと認識しなくてはいけないと思うのです。汚染された土を取り除けば、それでいいという問題ではないということを、金で補償すればいいという問題ではないということを、ちゃんと思い知らねばならないと思うのです。
 ヤツ等はそんなこと少しも分かろうとしていない!
   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ペルシャ湾情勢がまた不安定になってきているようです。もうメディアは原油が値上がりするのだのオイルショック再来だのと煽っています。
 せっかく脱原発が見えてきたというのに、世論を「やっぱり原発は必要だ」という方向に引き戻す口実が出来たようで、ヤバイです。
 一家に一冊、松下竜一さんの『暗闇の思想』を!

渡辺ひろ子(元・酪農家)
『私信 づれづれ草』NO.40(2012.1.16発行)より転載
PR

農と人とくらし研究センター

Research Institute for
Rural Community and Life
e-mail:
Copyright ©  -- 農・人・くらし --  All Rights Reserved

Design by CriCri / Photo by momo111 / Powered by [PR]

 / 忍者ブログ