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農・人・くらし

NPO法人 農と人とくらし研究センター コラム

カテゴリー「■ のふう草」の記事一覧

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Aさんに教えてもらったこと [お茶]

chabatake.jpg 自家用のお茶を作るのが永年の願いでした。昨年は時機を失したので、今年はよい時機を見て茶摘をし、お茶にしようと計画していました。読書会でAさんに出会ったので、いつお茶を摘んだらいいのか聞きました。「八十八夜ではまだ早い、もうちょっと後のほうがいいよ。私は1年分のお茶を作るからお茶の葉が大きくなって嵩ができてから」とのこと。お茶の産地では「一芯三葉」といって、1つの茎に3枚の新葉があるものを摘めということが常識だったから驚きましたが「嵩ができる」という言葉に自給のあり方を感じ取り、敬服しました。
 嵩ができた頃、我が家のお茶を摘み、教わったようにフライパンで「熱くて軍手の上からもお茶の葉がかまえなくなるまで」炒りました。義母が新しい筵を物置の2階から出してくれたので、その上で揉みましたが、下手くそな揉み様を見かねて、しっかり揉んでくれました。
 義母曰く「あんたがこんなことするんやったらお茶の木を残しとくんやった、お茶揉みがめんどうになって伐ってしまった」。道理で、家の裏にもっとお茶の木があったように思っていましたが、1本しかなかったのです。「この筵はお茶揉み専用にしたらええ、別にしてとっときんさい」。筵ばかりあっても、肝心のお茶の木がなかったら揉めないのに…、もっと早くから私が、お茶揉みをしてお茶を作りたいと意思表示しておけばよかったんだなあと後悔です。このお茶は先日開いたある会で、初めて飲みました。お茶ガラまでいとしかった。

『ひぐらし記』No.14 2007.6.1 福田美津枝・発行 より転載
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Aさんに教えてもらったこと [いたどり]

itadori.jpg 昨年の春、Uさんにいたどりの食べ方を聞かれました。そこで今年は食べ方を研究してみることにして、Uさんの山に採りに行きました。Uさんが人から聞いた方法は、皮を剥いて重曹を入れたぬるま湯に一晩浸け、そのあと水に浸けてあくを抜き、汁気がなくなるまでしょうゆで煮るということでした。また、三杯酢で食べる方法もあるということで、それを試してみることにしました。
 その時、用事があってAさんの家を訪ねていくと、玄関先に籠に入ったいたどりがありました。早速食べ方を聞くと、「皮をむいて、食べる大きさに切ってポリ袋に1回分ずつ入れ、塩を入れて空気を出して口をしっかりしぼる。そのまま冷蔵庫に入れ、塩が溶けたら漬け上がり。後は冷蔵庫にそのまま入れておいて使うたびに塩出しをして煮付けるだけ」という、いたって簡単な塩漬け保存を教わりました。
 Uさんから煮たものが届きました。おいしいです。私も煮付け(Uさんより少し汁気を残して)、三杯酢を作り、Uさん初めいろいろな人に食べさせました。いたどりと聞いてみんなびっくり。Aさんに教えてもらった塩漬けもして、冷蔵庫に入れていましたが、シティホテルで「伊深のご馳走」を出す友人に差し上げたので、これは来年また作ってみるつもりです。Aさんはいたどりの煮物がお客さんに一番喜ばれるといっておられました。珍味なのです。
 ちなみに農文協の「日本食生活全集」で調べたところ、和歌山、京都、愛媛、新潟などで食用にされていることがわかりました。塩漬けにして保存し、塩出しして煮物にして食べるようです。

『ひぐらし記』No.14 2007.6.1 福田美津枝・発行 より転載

平成の現代も田んぼの水争い

1a440241.jpg 朝早くからポンプの音がします。夜から続いている音、川から田んぼに水を上げるポンプの音です。田植えが終わって、田んぼに水をつけたいのに、雨が少なくて、水が来なくて、田んぼに水をつけられないからです。
 うちの周りの田んぼは基盤整備がしてなくて、田んぼの水を川から引く用水やため池の水に頼っています。それで、代掻きが始まる頃になると、水路から水を引く家に「○日○時に溝さらえをします」というお触れが来て、みんなで溝さらえや水路の周りの草刈をします。そして、上の田んぼから順々に水を引いて行きます。雨の多い年は十分水があるので、下の田んぼでも、少し待てばすぐに水が来ると安心して待っているのですが、今年のように水が少ない年は、代掻きも田植えも、まず水引です。
 代掻きや田植えの頃はまだ時々雨が降っていたので、水がつくまで、少々待って始めればよかったのですが(それでも我が家は1枚の田んぼに、予定していた日曜日に水がつかず、仕方なく1週間後の土曜日に代掻き、その翌日に田植えという始末)、田植え後1週間、ぜんぜん雨が降らず、川の水も少なくなって、水路の水の取り合いになりました。
 日曜日に除草剤をまく積りで、土曜日の夜に田んぼに水を引いておき、日曜の朝見たら全然入っていない。水路をたどるとうちへ来る水みちが完全に閉ざされ、よその田んぼに引いてあったとか。「自分のとこへ引くにしても、半分は残しておくもんや」と義母がかんかんになって帰ってきました。
 この日は暑い日中も母がこまめに水路を見て回り、ようやく夕方水がついて、除草剤をまきましたが、どうしても1枚の田には水が足らず、日延べとなりました。
 水路の水を待ちきれない人は、直接目の前の川からポンプで水を汲み上げ、田んぼに入れています。今朝は2台のポンプがエンジン音を響かせていました。その横を水着を持った小学生の一団が通り過ぎていきました。先週プール掃除をして、今日からプールが始まると、校長先生が話しておられました。「岩屋ダム(美濃加茂市の水源ダム、木曽川の支流飛騨川上流にある)の水が少なくて、もうすぐ節水宣言が出るらしく、そうなると真っ先にプールは取りやめになるんですが…」とも話されていたことを思い出しました。
 先週までは「天気が続かんかなあ、たまねぎの軸がよう乾くように」と言っていた義母は今、「いつ雨が降るんやろ、降ってくれんと米ができん」と嘆いています。この分ではプールも取りやめになりそうですし、これから先も水争いが続き、川からは少ない水をくみ上げるポンプの音がますます高くなりそうです。もうすでに少雨の影響が出ています。

『ひぐらし記』No.14 2007.6.1 福田美津枝・発行 より転載

コラム「のふう草」について

生活改良普及員として35年を過ごす間に、農村を舞台に魅力的に暮らす農家の女性たちに出会いました。岐阜県美濃、濃尾平野の北端で山と川と田畑に囲まれて、農婦の暮らしを愉しみ、その暮らしぶりを風のように軽やかに伝えたい、それがコラムに込める思いです。農婦と農風をもじった「のふう」と名もない「草」でありたい「のふう草」が私の舞台です。
福田美津枝

農と人とくらし研究センター

Research Institute for
Rural Community and Life
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