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農・人・くらし

NPO法人 農と人とくらし研究センター コラム

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「農村生活」時評14 "食にどうせまるか"

 食のあり方についての文章を書こうとしたら、今度の「事故米問題」がドンドン広がっていく。これまで世間で横行する「食品偽装」の主役はいつも民間業者だったが、今度は農林水産省が主役のひとり、いや悪役ないしは脚本家に近い芝居のようである。私なぞ組織の末端にいただけだが農水省OBの立場から、刻々伝えられるニュースに落ち着かない日々で、ここで食のテーマをとりあげるのはいかにも白々しい。しかしこの欄で研究集会の報告をするのは昨年に続きひとつの義務なので、話題提供者の素晴らしい活動の一端を紹介したい。
shokuji.jpg 9月はじめ、仙台市・東北福祉大学ステーションキャンパスにおいて「東北農村生活研究フォーラム・2008セミナー」が亘理農業改良普及センターの河野あけねさんのご尽力で「生産者と消費者を結ぶ~毎日の暮らしに"地産地消"を!」をテーマとして開催された。宮城県農業実践大学校の菅原美代子さんがコーディネーターをつとめ、生産者・消費者・それをつなぐ場の三者の個性的な報告があった。生産者としての洞口とも子さんは重要文化財である「洞口家住宅」を活用して「たてのいえ」という農家レストランと「旬の情報館」という直売所をつくり、名取市内の女性農業者の直売グループを組織して地元量販店に直売コーナーを設け、あわせて「なとり産直ネットワーク」を展開している。つまり今日の農業者として可能な限り消費者との多様な接点をつくり、日々、仙台近郊の都市住民に直接はたらきかけている。そこから提起された課題は、生産者だけではできない、市民へのつなぎ役、両者をむすぶ活動への期待であった。
 消費者として登場したのは異色であるが、会場である大学の学生食堂の運営にあたる(株)団塊世代・活動センターの伊藤敏男さんで、この4月にオープンしたばかりだそうだが、ここを拠点とした活動展開の主としてこれからの展望を語られた。この引退中の世代をつかむという今日的な組織づくり、JRと直結した、かつ、市民に開放する大学キャンパスの設計とその活用のあり方、大学生の食育への試み(本集会直後、朝日新聞・9月8日付け、「食育で生活改善」として紹介された)など多面的な展開の可能性には魅力一杯である。さて“つなぐ場”の栗原和子さんは仙台市繁華街に仙台味噌を中心に全国組織「良い食品づくりの会」の食品を提供する老舗店舗、佐々重の社員で、県産大豆によるミソづくり活動、「会」組織の担当者である。その立場から最近の消費者の動向が語られたが、このお店はやや、レベルの高いお客さんが対象のようである。しかしそこからも、今日の消費者の姿が見えてくる。
 つまり、みなさんの強調されたのは、普通の市民は食品にたいして特別の誤解とか偏見があるのではなくて、ごく当り前の食品知識に乏しくて食生活のイメージが貧しいことが、根底にあるということであった。もちろん大勢ではないが、ある人々は例えば、菜っ葉のことは知っていてもほうれん草と小松菜の違いはわからない、大衆魚のいわしとあじの区別がつかないということであった。ごく普通の献立を毎日つくる、当り前の食事を準備する生活のコツを身につけることに今の課題があるらしい。生産者も農産物のひと包みごとにレシピをつけるなど努力しているが、こういう消費者を相手にするにはさらに一工夫がいるのかも知れない。
 話題提供のなかにあったが、私の知っている範囲の普通の学生食堂は昼食が主体だが、東北福祉大・学食は夕食にも工夫して、「お袋の味」の再現、ご飯・味噌汁・主菜・副菜の献立を用意しているという。学生はその献立を携帯で写し、「ちゃんと食事している」と親に送信して安心させているという。

森川辰夫
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