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農・人・くらし

NPO法人 農と人とくらし研究センター コラム

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「農村生活」時評⑧ "有機・展示圃場をあちこちに"

ta.jpg 農薬汚染ギョウザ事件がきっかけか、農業危機の深刻化の反映か、農への関心、特に国産農産物、地元産品に関心が高まっているようである。この庶民というか、本音で生きているごく普通の市民の素朴な機運をぜひとも、本格的な農再生の活動へ結び付けていきたいものである。
 しかし長年の悪政と社会変動により農村現場は、暮らしの場としても生産の場としても荒廃しているので、この潮目が変わらないか、という願望か、大社会問題の解決はそう簡単ではない。それだけにまともな方向転換に役立つものはなんでも歓迎だが、難問だけに私はそのためには相当な社会的エネルギーが求められると思う。なかでも業界関係者には、吟味された"偽"ではない本物の施策を社会に提起する責任がある。
 農産物となるとすぐ、価格が問題になるが、これは政治的な領域でかつ、農業政策の中核的な課題である。この安定的な価格維持政策が不可欠の前提となってこそ、その次にはいわゆる消費者が求める安全・安心な農産物をどのように安定して生産するか、という生産側の課題が浮上する。地元産だから国産だから親しみがもてる、安心だというのはいいが、だから安全だとはいえないのが現実である。そこで生産側はどんなに困難であっても「有機農業」に挑戦していく方向、この王道しかないと思う。たしかに、現場には色々な事情があり、すぐには完全な中味ではできないことだけども、本当の国際競争力をつけるには、地域の理解を得るには、少なくともあるべき「農業技術」を想定して、それへ接近する努力は求められる。
 有機農業推進のために運動を進められている方々の活動方針を見たら、一つの項目として「展示圃場」の設置があげられていた。いま、この運動をひろげて多くの生産者が参加するには、先進的な人々からの経験を、その地域の中に恒久的な「展示圃」を設置して、そこでの学習活動を通じて経験、技術をひろげることが重要ではないか。
 かつての、いや、昔々の普及事業はこの仕事にかなり精力的に取り組んだが、いまは流行らないらしい。私自身は10年程前に「普及の再生のために、現代的な展示圃を」と提案したこともあるが、空振りだった。
 いま求められる「展示圃」は、実質的には生産者の自主的な運営でつくるものではないか。世間の端から私がいうべきことではないが、今日の生産者にはそういう力量は十分にあるのではないかと思う。もちろん、自治体には休耕地活用をふくめて用地の確保・提供、支援の予算措置など果たすべき役割はたくさんある。また、広域化した普及陣営はあまり乗り気ではないかもしれないが、展示圃場間の交流、ネットワークづくりには一役、買って出る必要があり、地域に新しい存在感をしめしてほしい。
 かつて「道の駅」などというものはなかったが、いまでは農業サイドでも無視できない存在である。流通体制整備も大事だが、今日の主要な課題はまともな農業生産の再生である。この圃場に広範な人々が参集しなければ、物事は動かない。
 そして生産者相互の技術交流、研鑽の場として発展してきたら、拡張してぜひ、地元消費者の教育の場として、さらには学校食育の場としても生かしてもらいたい。展示圃は生産のための場のようでいて、実は地域の暮らしを創る場でもある。

森川辰夫
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