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農・人・くらし

NPO法人 農と人とくらし研究センター コラム

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農業で懐かしさを取りもどす試み 3.仲間とはじめた区民農園

 ペーパー百姓では、稼ぎになる農業にはほど遠かった。ならば、というわけではないが、ペーパー(書類)を書いて、いくつかの助成金を得ながら、やってみたい農業を試してきた。「帰農で明日のむらづくり事業」という名で、三沢区は、長野県の地域発元気づくり支援金を今年度も含めて3年連続で受けた。帰農という言葉に、昨日(きのう)の意味も含ませ、耕作放棄地を開墾して、昔ながらの作物を植えてみるという試みである。
 三沢区は市街地に隣接する集落で、新たに加わる住民も多く、人が少ないわけではない。しかし、耕作放棄地は住宅の近くにも点在する。沢伝いに山深くまで連なっていた棚田は、今はほとんど草を刈るだけで耕作放棄され、3つある溜池の水もほとんど利用されていない。区民農園は3年前、区に土地を寄付してもいい、という地主の荒廃農地の開墾から始まった。重機やトラクターで耕せる状態にまで戻し、小区画に分けて家庭菜園として、希望する区民に無償で貸し出した。何年も耕作されていない農地は至るところにある。区民農園は年々増え、集団でも耕作することにした。子どもの頃の記憶をたどり、思いつくまま、蕎麦、大豆、麦などの種をまき、桑の苗を植え、山羊も飼い始めた。
 区民農園は当時の区長の発案で、地元農業委員とともに取りくんだ。活動は地元のマスコミにしばしば取り上げられたが、私はもとよりペーパー百姓で、他の二人も農業に精通していたわけではないから、区民農園といっても、むらの衆からは素人の遊びくらいに思われていたと思う。
 3年目の今年になってようやく彼らからも一目置かれる存在になった気がする。区内に住む元農業改良普及員が昨年から加わり、今年は野菜を育てて、多くの区民の口に届けられるようになったからである。新区長も活動を積極的に後押ししてくれ、7月に区民農園特別委員会を発足、月ごとに定例会を開催。さらに日曜の午前中を共同作業日に当て、秋野菜の作付けには、新たな区民も何人か顔を出してくれるようになった。
 助成金なしでも活動を続けられるように直売を始めた。夏野菜が実る7月末から区の公民館の玄関先に野菜を並べて、1袋100円で売っている。デーサービスに来る年寄りなど、公民館に立ちよる区民が買っていく。トウモロコシ、インゲン、トマト、茄子、南瓜など、なかなか好評で、来年の種代や資材・燃料費くらいは確保できそう。売れ残った野菜は、区内にある児童養護施設に届けて喜ばれている。ただ廃棄するしかなければ、作り手には心の痛みが残る。誰かが食べて喜んでくれるのなら、作った方もうれしい。

片倉和人(農と人とくらし研究センター代表)
『長野県農業普及学会報』第16号 2011年9月より転載
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