農・人・くらし
NPO法人 農と人とくらし研究センター コラム
言いつづけるには元気がいる(後編)
- 2007/07/10 (Tue)
- ■ 農 |
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日本では「顔の見える商品」と称して生産者の顔写真が貼られた農産物が売られている。なぜそんなことをするのか。視察先のアメリカの農業女性にそう指摘されて、はじめてそのおかしさに気づいたと、参加者の一人が話をした。顔写真のステッカーを作るにはお金がいるし、貼る手間もかかり、食べるときは剥がさなければならない。地産地消とは本来どういうことを指すのか。顔の見える商品とは、近所で採れて、食べる人が作る現場を見知っている農産物をいうのではないか。勘違いは消費者だけでなく、生産者も同罪かもしれない、と。
広告会社に高いお金を払って、牛乳に全く関係のない人に作ってもらうより、自分たち生産者の中から標語(キャッチコピー)を募集した方がきっといいものができるにちがいない。牛乳の宣伝方法についてのこの提案は、その日のみなの議論を集約していた。
消費者との関係をめぐるやりとりを聞いていて、ある書評の一節が私の頭をよぎった。「そもそも情報は伝わらない・・・刺激を受けて『変容』するだけなの」だと、基礎情報学の第一人者が近著(西垣通『ウェブ社会をどう生きるか』岩波新書)に記しているという。生産者の思いどおりに消費者に分かってもらうことはそう簡単なことではない。そう考えだすとどうしても悲観的な方向に思いは傾いていく。
帰り際に知り合いの酪農経営主と挨拶を交わした。「生産者が言いつづけるほかないのよ」、きっぱりと力強い言葉が彼女から返ってきた。なるほど彼女は、消費者や農政に対して自分の考えを語れる知性や経験だけでなく、言いつづける元気をあわせもっている。新しい知見だけでなく、なにがしかの元気を、私も彼女からもらって会場を後にした。
片倉和人(農と人とくらし研究センター代表)
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