農・人・くらし
NPO法人 農と人とくらし研究センター コラム
村の暮らしと女性たち(1)-バングラディシュの村から(その1)
- 2008/07/25 (Fri)
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モスレムさんは、私が滞在していた村の家の二軒隣に住むおじいさんだった。私はそのころ、アクションリサーチプログラムという農村開発のプロジェクトに入れてもらって、よくわからないままに、あたふたと日々を送っていた。
モスレムさんは、もうおじいさんなので、軒先の部屋で過ごし、たいていは、軒下にしゃがんで景色をみたり、おしゃべりをして一日を過ごしていたと思う。赤ちゃんの子守くらいはしていたかもしれないが。私は、アクションリサーチにも、開発プログラムにも、たいして興味無さそうに、のんびりと過ごしているモスレムさんの佇まいにほっとすることが多く、ときどき、時間の合間をみては、何となく訪ねていって、おしゃべりをするでもなく一緒に時を過ごすことがあった。
日本はどれくらい遠いんだ?というようなたわいもない話ばかりだったが、あるとき、モスレムさんの家族の話になった。モスレムさんは「いい子どもらに恵まれた」と言ったあとで、自分よりも早く亡くなった妻について「いいカミさんだった」としみじみとした顔で思い出すように語っていた、そのことが、今でもずっと忘れられない。
その頃、"プロジェクトは、お前は村の"開発"、"発展"のために何ができるんだ?"という村の男たち女たちからの有言無言の圧力のなかで、大したアイディアも出せない私は、かなり追い詰められた気持ちになっていたと思う。しかし、モスレムさんは、それを全く超越したような面持ちで、日々を過ごしていた。
吉野馨子(農と人とくらし研究センター研究員)
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