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農・人・くらし

NPO法人 農と人とくらし研究センター コラム

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Aさんに教えてもらったこと [くさぎ]

kusagi.jpg 私の住む伊深町には「正眼寺」という臨済宗妙心寺派のお寺があります。そこは檀家を持たない(厳密には一集落に限ってありますが)、雲水さんの修験道場となっているお寺です。このお寺の精進料理に「じょうざん」というものがあって、それはくさぎという植物の葉を大豆と一緒に煮たもののことです。
 この葉は乾燥して保存するもので、以前誰かにいただいて食べたことがあったのですが、昨年秋にAさんからのおすそ分けをMさんからいただき、来年はぜひ自分でも作ってみようと思っていました。
 その後、Aさんから「くさぎは正眼寺が6月1日に採ってゆでて干されるので、伊深のものはそれ以降に採ります」とお聞きしていたので、5月末にいつ採りますかとお尋ねしたところ、じゃあ今日の午後伊深じゃないところで採りましょうということになりました。 
 長袖長ズボン、帽子に長靴、軍手と腰籠を持ってAさん宅に行きました。ご主人Sさんと3人で車に乗り、S市のお宮に向かいました。ここはSさんが以前からくさぎがあると目をつけておられたところでした。Sさんが枝ごと伐り取り、Aさんと2人で葉を摘み取ります。採り終わって、お宮にお礼参りをして、伊深へ戻り、Aさんのうちの奥の方の山際でも摘み、Aさん宅に戻りました。
 庭にくどを用意し、大きな鍋に湯を沸かして葉を茹でます。葉から茶色のあくが出て、2回ごとに湯を変えなければなりません。まきを焚くくどなのであっという間に湯が沸き、次々と茹で上がります。茹ったものはバケツに入れて流し水をかけてさらにあくを抜きます。ここまでで1日目は終了。
 2日目はこれを干すのですが、くさぎの葉は厚くて油気があるのか、1枚1枚広げて干さなければならないのです。前日、茹で上がったものを少しうちへ持ってきて、流し水にあてておいたので、朝早くからうちで干し始めました。広げると案外場所をとるので、いつもしいたけを干す網戸1枚分では足りません。まだ網戸が2枚あるというので持ち出して洗って、さらに笊という笊を総動員しました。
 葉は乾くと少しの風にも飛んでしまいました。やはり側面がある笊でないと駄目でした。一人でやっていると嫌になります。正眼寺ではくさぎ干しは雲水さんの修行の1つとして行うそうです。やはりこれは修行だと思ってやらなければできません。
 午後からはAさんのところへ行って干しました。3人でやると早い気がします。Sさんにコーヒーを入れてもらい、様々な話をしながら、ちょうど用があってきた文庫の仲間のSKさんも引っ張り込んで、おしゃべりもますます盛んになり、こうなると修行というよりも楽しい仕事になりました。
 茹でたものをその夕方、大豆と一緒に煮てみました。じょうざんを村人に教えた「慧玄さん]という正眼寺の開祖様は、村人から食べ物を分けて貰うのに偲びがたく、村人が食べないものを食べようと思ってくさぎを食べることにしてのだそうですが、良くここまで手をかけて食べられるようにしたものだと感心してしまいます。そして、今ではAさんだけが、毎年これを作り続けておられることにも敬服です。

『ひぐらし記』No.14 2007.6.1 福田美津枝・発行 より転載
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