忍者ブログ

農・人・くらし

NPO法人 農と人とくらし研究センター コラム

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ひな祭りコンサート

momo.jpg 隣町の造り酒屋M屋さんで、今年も2月4日から3月3日まで、ひな飾り展が開かれました。M屋さんの奥さんや、新聞販売店のUさん、Nさんの女性3人が平成17年に始められて今年で4回目です。昨年から、私も加わらせていただいています。
 今年のひな飾り展では、コンサートをやろうということで、最終日曜日の3月2日に決め、地元で三味線を習っておられる方や、M屋さんの奥さんKさんも加わっておられる「T町朗読の会」の方々による朗読などを取り入れて、ぜんざいと甘酒つきのコンサートを計画しました。
 私はぜんざいを担当しました。コンサートの5日前に菱餅をつきました。白い餅と、蓬餅、赤米の餅の3種類の餅をつき、菱餅を3組作り、残りは小さな四角に切って、ぜんざい用の餅にしました。Uさんは企画と広報担当で、新聞折込にするミニコミ誌に、このコンサートのことも掲載してPRに努めます。
 いよいよコンサートの当日、前日から煮たあずきを味付けし、小梅や沢庵、かぶら漬けを用意して、会場であるM屋さんにつくと、座布団やひざ掛けを小脇に抱えた年配の方たちが、会場に入っていきます(地元の老人会の方々が楽しみに待っていたとか)。会場はM屋さんの店の中。一升びんを入れるプラスチックの箱を伏せて、そこに板を渡し、毛布を敷いた、にわか作りの観客席には、もう何人か座っておられ、店の奥の間には座布団持参の方々がひざを並べてお座りして見えます。
 ぜんざいや漬物を準備している間にも、お客さんがどんどん入って見えます。ぜんざい足りるかしら、余分に持ってきたあずきに、味をつけたほうがいいかしら、次々に増えるお客さんたちを見て、心配になります。
 時間が来て、Uさんの開会で、いよいよ始まりました。オープニングとして、初めには予定していなかった男声コーラス「岐阜ボーカルサウンド」5人の歌声が聞こえてきました。このコーラスは、飛び入りでした。コンサートの2週間ほど前に、Kさんの同級生の方々が、ひな飾りを見ながら同窓会をM屋で開かれたとき、このコンサートの話が出て、そのうちのお一人の方のご主人が男声コーラスをやっていらして、「主人たち、歌いたいばっかりだから、ここで歌わしてもらうと喜ぶと思うわ」の一言から、飛び入りの出演が実現しました。
 オープニングの飛び入りにしては8曲ほども歌われましたが、素人とは思えないハーモニーで、ひな祭りに、男声のコーラスも、なかなか面白い趣向だ、特に、女性を楽しませるには、魅惑的な男声コーラスが最もふさわしいなあと思いました。
 次は朗読の会の「故郷の春」の朗読です。地元の6人の女性が、このM屋がある町で、明治に生まれ育ち、東京で活躍した「木村小舟」さんが書いたお話の朗読です。ひな祭りにちなんで、春らしい桜のことを書いた、小舟さんの幼いころの思い出につながるお話です。子供向きに書かれたとはいえ、明治のころの言葉遣いなので、多少難しい言葉づかいも出てきていますが、それが奥ゆかしい雰囲気を作り出して、趣のある朗読となりました。優しい女性の声が、春の暖かさや、桜の華やかさを感じさせました。
 最後が「徳山流津軽三味線」の演奏です。これも、地元の4人の女性が習っておられる、その腕前を披露していただくのです。聞きなれた曲も多く、なじみのある演奏のようでしたが、このころからは、演奏が終わった後に食べていただくぜんざいの餅を焼かなければなりません。Kさんの3人の娘さんと一緒に、ぜんざいや甘酒を温め、餅焼きのフル回転です。オーブントースターや電子レンジを使い出したら、突然ヒューズが飛んで、停電。あわててご主人にセットしていただいて、再開(ちょうど演奏は夕焼け小焼けに入っていたので、三味線の方は、曲に合わせて照明を暗くした演出だと、その心配りに感激されたとか、冷や汗ものでした)。
 好評のうちに演奏が終わり、あられと炒り豆(近くの方がお手製を作ってくださったもの)の入ったおひねりが配られ、次々とぜんざいや甘酒のお椀がでていきます。予備の予備もあずきまで、大急ぎで味付けして、60客用意したおわんを洗い足して使って、大賑わいの店内。夢中になっていた餅焼きを終え、気がつくともうお客さんは去っていって、がらんとしたお店の中に、空のおわんや漬物鉢とともに、心地よい達成感が残されました。
 Kさんの話によると、最近は各地でひな飾りが行われるようになったことと、今年は土・日曜日には、必ずお天気が悪くなったので、ひな飾りを観に来たお客さんは、昨年よりも少なかったとか。しかし今日のコンサートには、予想をはるかに超えた人の入りでした。この店の中に、よくもこんなに人が入ったものだと人ごとのように感心しながら、裏方の皆さんと、残り物のぜんざいや甘酒をおなかいっぱいいただきました。
 このコンサートの前、2月4日にはオープニングを記念して、このコンサートに出ていただける朗読の会や関係するものたちで、昔のひな祭り料理を楽しみました。あずきご飯、丸干しイワシの焼き物、先星大根とサトイモの煮物、つぼ(タニシのこと・アサリで代用)とねぎの味噌和えなどを食べ、おいしいお菓子とお茶を点てていただき、楽しいひと時を過ごしました。
 私たちの年代は、日々、仕事や家事、雑用などに追われて、周りの人と話すことも少なくなっています。そんな時だからこそ、こうして時間をやりくりし、顔を合わせて話すことがとても大切なことに思えます。それに食べ物がくっつけば、「同じ釜の飯を食う」仲間意識もでき、話も弾みます。
 このひな祭りを介してのコンサートでは、地元で朗読や三味線を楽しんでいる人があることを知りました。勝手な想像ですが、演奏してくださった方々も、愉しんでくださったのではと思います。どのグループも、出演料はなくても出ていただき、お礼はおひねりのあられとぜんざいや甘酒を食べていただいただけです。
 豆炒りやあられ作りの上手な人を知って、それを味わうこともできました。その方たちも、喜んで作って、持ってきてくださいました。
 座布団を持って、芝居見物のようにコンサートに足を運んでいただいた、ちょっと高齢の方たちには、三味線ばかりでなく、チョイ悪っぽいおじ様方のコーラスは新鮮だったのではないでしょうか?(ぜひ、感想を聞いてみたいものです)
 計画したものの、最初はどうなるのか皆目つかめず、「自分たちがまず楽しめればいいや」くらいの考えで始めましたが、私たちはもちろん、演奏者のかたもお客さんも、大いに愉しんでいただいたコンサート、これからも、楽しいことを考え、大勢の人が集まって、皆さんで一緒に愉しみたいと思っています。

『ひぐらし記』No.20 2008.3.10 福田美津枝・発行 より転載
PR

農と人とくらし研究センター

Research Institute for
Rural Community and Life
e-mail:
Copyright ©  -- 農・人・くらし --  All Rights Reserved

Design by CriCri / Photo by momo111 / Powered by [PR]

 / 忍者ブログ