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農・人・くらし

NPO法人 農と人とくらし研究センター コラム

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バングラデシュ 村の植物誌

○○食べる
 マンゴは、食べると"やせる"食物であると考えられている。

<熟していない実>
 マンゴの未熟果は酸味が強い。実がつく時期はちょうど暑い時期でもあり、いろいろな料理に混ぜられ、食欲増進に用いられている。
 トルカリ(おかず、の意味。野菜、肉や魚を、ターメリックやトウガラシなどのスパイスで煮たり焼いたりしたもの)の中では、野菜のトルカリ(ニラミシュ:肉なし、という意味)や魚のトルカリと合うと言われている。また、ダル(豆のスープ)やキチュリ(米に豆などを混ぜて炊き込んだもの)にも入れることがある。
 そのままのマンゴをトウガラシと塩をつけて、すっぱい味を楽しむのは、子どもや妊婦に多い。妊娠するとすっぱいものが食べたくなるのは、いずこも同じなのだ。そのほか、細く果肉を切ってから塩とトウガラシとまぜると、それはアメル・ボッタ(マンゴのボッタの意、ボッタとは、野菜や果物をそのまま、あるいは蒸してから、油や塩、スパイスと混ぜて練ったもの)という料理名となる。細切りの果肉を、カションド(マスタード粒とスパイスを原料として作るソース)に混ぜても、マスタードのぴりっとした味が利いて、美味しい。が、きょうび、カションドを手作りするような家はほとんどなくなってしまった。
 その他、切って砂糖と煮たり(ムログバ)、乾燥させたり(フォリ)、砂糖やスパイスと混ぜてピクルス(アチャル)も作れるが、それほどには収穫もないし、手間もかかるということで、現実には、大半が生や料理に混ぜて食されている。

※カションドの作り方:ライショリシャ(ナタネの一種)の実を新年から1ヶ月の間に、サリーで包んで洗っておく。それをすりつぶし、ジラ、ゴルモスラ、シナモン、ロボンゴ、ショウガ、ターメリック、トウガラシ、テズパタ、塩と混ぜ合わせる。
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左: カションドの材料

右: カションドをすり潰している調理器具は、シルパタといって、石で作られている

<半熟の実>
 ちょっと甘みが出てきた半熟果を細切りしてカションドと混ぜても美味しい。

<熟した実>
 熟した実は、そのまま食べるよりは、ムリ(ポップライス)や、ムリと牛乳を混ぜたもの、あるいはご飯と牛乳を混ぜたものの中に入れ、手で混ぜ合わせながら食べる方が好まれている。ようやくトルカリとご飯を食べ終わったのに、また新しい皿にご飯を入れられて、「もう、おなかが一杯」と辞退したい気持ちになるが、そこに、熟したマンゴを加え、ミルクをかけると、ご飯や牛乳の甘みとよく混ざり、リッチなデザート気分。熟したマンゴも乾燥させることもできるが、その場合は、フォリではなくショットと呼ばれる。

○○薬として
 バングラデシュでは、ガスティックという体の状態がある。女性に多いといわれているようだが、胃腸にガスがたまり、おなかが張るような状態である。このようなとき、若葉のしぼり汁を水で薄め、朝に飲むと良い、と言われている。
 また、伝統的治療師(コビラジ)が主に施す用法であるが、下痢のとき、酸味種のマンゴの幹を削り、スパイスのようにシルパタですりつぶし、服用させると良いと言われている。

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マンゴの根を柄に使ったアチャリ(鎌) 使いこなされたアチャリ

○○木材として
 マンゴの木は、柔らかいため、虫がつきやすく、あまり良い材とは言われてないが、近年は木材の不足もあって、よく利用されるようになっている。柱などの建材には利用されないが、寝台、扉やテーブルなどの材として利用されている。ベッドをマンゴの材作ると安く仕上がるが、それで眠っていると、そのうち、ギリギリ、ギリギリ、と虫が材を食べる音を、寝ている間中聞くようになり、何年かすると、ベッドの足元には、虫食いのくずが山となる。その一方、マンゴの根は硬いため、鎌(アチャリ)の柄の材料として利用される。

○○そのほか、葉や枝は、燃料として用いられている。
 また、キンマという嗜好品(ビンロウジュという椰子の実の一種の砕いたものを、キンマの葉でくるみ、噛んで、その苦い、しびれるような味を楽しむ、キンマとビンロウジュについてはまた後の回で紹介)がある。とくに中高年、なかでも女性が好むものだが、キンマはつる性で、他の樹木に這わせる必要がある。マンゴはキンマを支える樹種として適しているといわれている。マンゴに這わせると、キンマが美味しくなるそうだ。マンゴにとっては、キンマの根から樹液を吸われていることになるので、あまりありがたくない話しかもしれない。ちなみに、マンゴと同じウルシ科のジガという植物も、その支えとして適しているそうで、ウルシ科の植物はキンマにとって相性がいいのかもしれない。
 また、マンゴの花で蜂蜜を採っている人もいる。

 マンゴは、『コナルボチョン』という、ベンガルに古くから伝わることわざ集にもよく登場している。

「アム(マンゴ)は稲、テトル(タマリンド)は洪水」(マンゴがたくさん取れる年は、稲もよく取れる、テトルがたくさん取れる年は、洪水が起きる)」マンゴが知らせる気候

「アムを植えて、ジャム(ムラサキフトモモ)を植えて、カタール(ジャックフルーツ)を植えれば、12ヶ月いろんな果実が次々取れる」マンゴなど果実の恵み

「チョウトロ月(3月中旬から4月中旬)の霧、アムは腐る、タル(オウギヤシ)とテトルはとても良い」マンゴに適した気候、などさまざまである。

(コナルボチョン:Khonar bochon, 1995, Narigrosuta Poribortona, Dhakaより引用、翻訳)。

吉野馨子
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農と人とくらし研究センター

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