農・人・くらし
NPO法人 農と人とくらし研究センター コラム
くさぎのこと
第2次世界大戦のときに、正眼寺を頼って疎開してこられ、そのままこの地に住み着いたSさんは、正眼寺に伝わるくさぎをずっと伝えてこられました。地域の文化的な活動の中心人物であるSさんとともに、この「くさぎ」を守り広めようとして、私たち数名が活動を始めています。その一端を、昨秋、地域の小さなFM放送でお話しした時にまとめたものが次の文章です。
地域の人たちがくさぎのことをよく理解し、地域に伝わる大切な物として考え、少しでも食べ物として復活していくことを願って、これからも活動していくつもりです。
FMでんでん 11/3 12:20~放送のお話内容
伊深町くさぎの会
くさぎのこと
美濃加茂市伊深町には、くさぎという植物で作る「常山」という食べ物がありました。みなさん、くさぎという植物をご存じでしょうか?これは、くまつづら科に属する植物で、畔や山際に茂り、2~3メートルの高さの木です。春先に葉を伸ばし、この葉を食用にします。伊深町にある正眼寺という妙心寺派の禅宗のお寺では、毎年6月1日に、雲水さんたちがこのくさぎの葉をとり、大なべでゆでて、その後水にさらして1枚1枚広げて干し上げ、乾いたものを保存しておいて、使います。
食べ方は、水に戻して刻み、大豆と一緒にしょうゆで煮ます。これが最初にお話しした「常山」という料理です。正眼寺に伝わる精進料理で、今でも正眼寺では、7月10日のお舎利講や、10月12日の開山忌のおとき料理には必ず出されます。
なぜ正眼寺でくさぎの料理を出すのかと言えば、これにまつわる1つのお話があります。昔々、花園天皇のころに、京都で修業を重ねた慧玄さんというお坊さんが、伊深の地に来て、修業をしていました。村人に食べ物を恵んでもらっていましたが、貧しい村人から食べ物を貰うに忍びなく、だれも食べなかったくさぎの葉っぱを食べられるように工夫してして食べました。やがて京の都に帰って行くときに、村人にこのくさぎの食べ方を教えていきました。それが、慧玄さんが開いた正眼寺や伊深の地域に伝わってきていたのでした。
伊深町の各家々では、昔から6月になるとくさぎの葉をとり、ゆでて水にさらしてあくや苦みをとり、広げて乾燥して保存食にしていました。ところが食べ物が豊富になり、苦労しなくても何でも食べられるようになると、だんだんくさぎを食べることがなくなって、忘れられてしまいました。
私たちは、伊深に伝わるくさぎ料理を絶やしてはいけないと思い、昨年から色々なことを行ってくさぎのことを広めています。そのことが認められて、今年は伊深町公民館講座に取り上げられました。くさぎは夏に甘いユリのような香りのする白いきれいな花をつけます。秋にはそれが実り、赤い萼の上に青い小さな実をつけます。その実は昔から水色に染める染料として使われてきています。また、食用にする葉からも薄い緑色に染めることができます。
そこで、公民館講座では、6月にくさぎの葉をとってゆでて水さらしをして、干し上げることを、7月にはくさぎの葉での染め物講座、8月はくさぎの料理、10月にくさぎの実の染め物の4回の講座を行いました。最初は近くの方が10人ほど集まるものでしたが、回を重ねるに従って参加者が増え、遠くは八百津町や可児市から来ていただいた人もありました。
8月のくさぎ料理の講座では、くさぎと大豆の煮ものの「常山」と、煮たくさぎを混ぜこんだくさぎご飯、くさぎの入った七色汁を実習しました。これらにはジャコを入れたりして、現代の口に合うようにしました。くさぎを混ぜて焼いたえんねパンも試食しました。夏休みのこの時には、伊深小学校の先生も来て下さって、くさぎ料理を召し上がっていただきました。
これがご縁で、10月29日には5年生の学級で、子供達と一緒にくさぎ料理を実習して、伊深に伝わってきたくさぎ料理を体験してもらいました。子供達の反応は「くさぎの葉っぱは臭いけど、調理をしたらおいしくなった」「お母さんに食べさせてあげたい」「自分でくさぎを採りに行って料理を作りたい」などと言い、感想文には「伊深に伝わってきたくさぎを僕たちも伝えて生きたい」ということも書いてありました。
11月2日は、伊深町文化祭でしたが、昨年に続いて、今年もくさぎコーナーとしてくさぎ染めの作品を展示したり、くさぎを現代の食事に使おうということで、くさぎ入りオムレツやクッキー、えんねパンの試食なども行いました。
このように、少しづつではありますが、伊深に650年も昔から伝わるくさぎを、さらに後世に伝えることをしながら、郷土を大切にすることを子供達に伝えていきたいと思っています。
福田美津枝
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