農・人・くらし
NPO法人 農と人とくらし研究センター コラム
お盆の七色汁
義母は14日のお昼に七色汁をお供えするというので、ずっとそのようにしてきました。ところが、今年の盆の14日の午後、用事があって出会った隣集落のFさんから「七色汁は15日の昼に供える」と聞きました。Fさんは嫁に来てからずっと、お姑さんに教えてもらったことを紙に書いて残している、そして七色汁の中身も昔から決まっているので、毎年その通りにしていると言うことでした。
Fさんに教えていただいた七色汁の中身は里芋、だつ(里芋の茎)、にんじん、ごぼう、なす、油揚げか豆腐、そして味付けのしょうゆの7種類です。この汁は仏様にお供えするのでかつお出しも煮干も使わない、しかしそれではうまくないので、おしょろ様に供えた後に出しを入れておいしくして人間様は食べると言うものでした。
我が家はそれに比べればずいぶんいい加減です。とにかく七色あればいいというので、今年はなす、いんげん、玉ねぎ、きゅうり、しいたけ、じゃがいも、油揚げの七色でした。義母はハスダツ(茎の緑色の里芋で、赤だつのように茎を主に食べるもの)や里芋を入れていましたが、この頃ではハスダツを作らなくなったし、里芋も私は掘ってこない(掘れない、掘る気がない)ので省略して、身近にあるもので済ませています。Fさんのお話を聞き、ごぼうも里芋も畑にはあるので、やはり根気出して掘ってこなければいけないと反省しました。
その翌日、以前からくさぎご飯のことを教えていただきたいとお願いしていたEさんから、「今くさぎご飯を炊いておしょろ様にお供えしたから来て頂戴」と電話があって飛んでいきました。おしょろ様の前にくさぎご飯、七色汁、なすの塩もみ、お茶がお供えしてあり、私のためにくさぎご飯と七色汁を用意して、もてなしていただきました。くさぎご飯のことをお聞きしながら、七色汁についても教えてもらいました。
Eさんのところも15日のお昼に七色汁をお供えします。中身はその時にあるもので済ますと言うことで、今年はオクラがたんとあったからオクラを入れたとおっしゃいました。いただいた七色汁にはなす、ごぼう、きゅうり、オクラ、里芋、油揚げなどが見受けられました。
Eさんにもおしょろ様のお供えのことをお聞きしました。Eさんも台所から紙切れを持ってきて、それを見ながら教えてくださいました。その紙にはきちんとおしょろ様の献立が書いてあるようでした。皆さん記録してとってあります。いつもいい加減な覚えで済ませてきたことを反省、これからは記録すべしと誓いました。
Eさん宅のお供えはFさん宅ともわが家とも違います。Fさんに聞いている時に一緒におられたAさんは、「その家、その家に伝わっていることはいろいろあって当然で、どれが正しいと言うことはないんやよ」、「そのうちうちのおしょろ様のお供えを調べたら面白いんやないかね、今だれかが記録していかんと消えていかへんかね」と言われました。
この七色汁は、同じ禅宗であった実家では作っていませんでした。距離にして5kmほどしか離れていないところです。Fさんもやはり隣町の禅宗の実家では作っていなくて、伊深へ来て始めて知ったということでした。ところが、昨年8月25日の農業新聞には、三重県鳥羽市の小崎さんという方が、
夏野菜がたっぷり入った「ぼん汁」は守るべき大事な伝統料理の1つだ。ぼん汁は、親から子へ、子から孫へと伝えられてきた。具材として7色になるように野菜を入れて、別名「七色汁」とも呼ばれる。「なぜ七色なのかはわかっていない」と言う。このように紹介されていました。ぼん汁というものの、盆だけのものではなく、夏に食べる伝統料理で、夏ばて防止にもぴったりで、みその味が優しく夏野菜を包み、食欲がどんどん湧いてくると書いてあります。
ぼん汁 材料(かぼちゃ、なす、里芋、枝豆、ごぼう、にんじん、ユウガオかトウガン みそ)
伊深の七色汁と同じようなものが遠く、海辺の鳥羽市で、海女として83歳まで現役だった方に、その土地の伝統料理として紹介されていたので、興味深く切り取っておいたものです。調べれば、七色汁の存在や謂れなどが各地から現われそうな気がします。身近なところから聞いていきたいと思います。
福井や兵庫あたりで恐竜の化石が発見され、古代の生物への関心が高まっていますが、それと同じような未知への発見に胸が躍ります。
『ひぐらし記』No.16 2007.8.20 福田美津枝・発行 より転載
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