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農・人・くらし

NPO法人 農と人とくらし研究センター コラム

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(2011.5.31)

 みなさん、お寒うございます。6月に言う挨拶でもないと思いつつ、でもやっぱり、寒いですよねぇ。
 台風2号、沖縄の映像はすごかったですねぇ。人が道路をびゅーっと滑って、ガンとモノにぶち当たったり。台風慣れしている沖縄の人も驚く強風だったようです。アメリカの竜巻もすごいし、何だか最近、自然の猛威の前に人間の存在の小ささを思い知らされる事象が続いています。「人間よ、もう少し謙虚になれーっ」と天が吠えている気がします。
 ところで、福島の原発事故、ひどいですねぇ。あとからあとから隠されていたものが小出しに出てきて、事態が事故発生当初から相当深刻なものだったこと、東電も政府もそれを認識しながら隠蔽し、出来れば隠したままコトを終息させたいとあがいていたことなどが明白になりつつあります。その間に多くの作業員や住民が大量の放射能を被爆させられていたのですよねぇ、これってもう犯罪ですよ。事故直後に東京の亀戸で福島原発の建屋と同じレベルの放射能を計測した、なんてことが2ヶ月も経って公表されるって、どういう国なの?
 農産物などに関して「風評被害」という言い方がされます。あたかも「実害はないのに、消費者が過剰反応して売れない」かのような言い方ですが、現実問題としてどこの野菜にどれほどの放射性物質が付着しているか分からない今の状況を「絶対安全」なんて言えないでしょう。
 5月30日の朝日新聞の俳壇に福島市の人の句で「春の牛 空気を食べて 被爆した」というのが載っていました。
 すべて、東電と政府が身を切って賠償すべきです。会社の資産も役員の資産や給与もみんな吐き出させるべきだし、国も政党助成金や防衛費やらもゼロにして原発事故被災者救済に当てるのが当然だろ? 東電リストラで役員報酬を半分にカットした結果、それでも社長は日当換算で20万円とかいうウワサ。マジ? 日当1万円に釣られて日雇いのおいちゃんたちが福島原発に連れて行かれているというのに…。東電役員たち、お前らが現場に行け! 建屋に入って作業しろ! 原発推進してきた政治家たちも、原発安全のお墨付きを与え続けた学者も裁判官もみんな現場に行って、作業しろ! 責任とれ!
 というような威勢のいい言葉も、しかし、危険な原発を止める力を持ち得なかった私たち自身へと撥ね返ってくるのです。原発が危険なものだということを「知らなかった」という人たちの罪も小さくはないと思います。知らないことの罪をいいかげんに自覚すべきでしょう。

 左掲の新聞記事(※)、象徴的だなあ、とため息とともに読みました。多くの人達ががんばってがんばって築き上げ、一歩一歩前に進めてきた「もの」や「こと」が原発事故によって砕かれてしまいました。がんばってきた「生意気な嫁」たちは今、避難した先で身を小さく暮らしているのでしょうね。みんなで村に帰れる日が来るといいのですが…。
 チェルノブイリのあの荒涼とした「村の跡」が飯舘村の25年後の姿でないことを祈る思いでいます。


※2011.5.19 朝日新聞記事より

「生意気な嫁」を育てた村 浜田陽太郎

 原発事故による計画避難が始まった福島県飯舘村で22年前、「若妻の翼」という村の単独事業が始まった。
 40歳代までの女性に、10日間、欧州旅行をしてもらう。
 日程は、わざと農繁期の秋に組まれた。その方が、家族にとって、ふだんは黙々と働く「お嫁さん」のありがたさが身にしみる。
 行く方も、家族の了解を得るハードルが高い。自己負担の10万円も安くはない。それでも行くには、「家族円満が保てないのでは」という、引っ込み思案のカラを何枚も破らねばならない。
 旅から戻ると、今度は「嫁が生意気になった」という評判が立つ。「少し指導して下さい」という投書が役場に届いたこともある。
 しかし、村長や担当者は動じない。なぜなら、「せっかくカラを破りだした女性を自粛させては、税金をドブに捨てるに等しい」からだ。
 5年で91人が訪欧した事業を、酪農家兼公民館長として支えたのが、現村長の菅野典雄さん(64)だ。そのエッセーに経緯が詳しい。
 「男女平等を嫌う」「頭たたき、足ひっぱりが常識」。こんな田舎の現状を直視した菅野さんは、危機感を持つ。
 「言いたいことを言い、したいことができる女性を増やすのが特効薬」と見定めて、事業に取り組んだ。
 飯舘村はいま1人の女性が生涯に産む子どもの平均が1.85人で県内一だ。「女を不幸にして、男だけが幸せになれない」という時代認識がカギだったと思う。
 2005年に日本が人口減少に転じたことを取材しながら、「少子化が始まった30年前から、こうなるのは予想されていたのに、なぜ有効な手が打てないのか」という疑問を抱いていた。
 これに対する納得のいく答えを、飯舘村の「若妻の翼」に見る思いだ。要するに、現実から目を背けず、対策を立てるかどうかなのだ。
 原発でも同じような構図が見える。「危険だし、事故は起きうる」という事実に目をつむり、必要な対策を怠ってきた。現実を見ようとせず、「安全神話」に慣らされてきた。私も、その一人である。
 いま、放射能禍が「生意気な嫁」を大切にしてきた飯舘村を襲っている。美しい田園風景は何も変わらないだけに、罪深さはかえって際立つ。でも、丁寧に紡がれた共同体は、きっとまとまりを保ってくれるに違いない。

 (社会保障社説担当)


渡辺ひろ子(元・酪農家)
『私信 づれづれ草』NO.35(2011.5.31発行)より転載

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