農・人・くらし
NPO法人 農と人とくらし研究センター コラム
浮世詠んで「憂さ晴らし」
20年来の友人で、反基地運動の仲間でもある原田さやかさんの夫・吉治さんの短歌集です。短歌集というと敷居が高いと敬遠しがちですが、これは違います。短歌集を読んでこんなに笑ったの初めてです。身近に原田夫妻の日常を知る私なんぞは、もう、爆笑です。さやかさんは「全部買い占めてどこかに押し込んでしまいたい」と言ってます。私がこんな所にドカッと「宣伝」したら、いっそう嘆くだろうと思いつつ、あえて載せました。浮世詠んで「憂さ晴らし」
男の本音・乳がんの妻・基地問題・・・1300首
みやこ町豊津、元農水省福岡農政事務所職員の原田吉冶さん(65)が安本淡[あんぽんたん]のペンネームで初めての歌集「憂さ晴らし」を自費出版した。妻は旧豊津町時代から、現在のみやこ町まで町議を通算6期務め、乳がんと闘い続ける原田さやかさん(63)で、ふたりで歩んできた日常生活の喜怒哀楽を、絶妙の感覚で詠んだ短歌集に仕上がっている。(安楽秀忠)みやこの原田さん、自費出版
短歌を姶めたのは50年近く前、母親が37歳で亡くなったころからだった。歌集はその母にささげ、発行日は50回忌にあたる今月2日にした。自分の短歌を「手帳の端の走り書き」と評する。日々の生活の中でわき出てくる男の本音やつぶやきを言葉にしたという。さやかさんとの感情のやりとりが、読む人を思わずクスッと笑わせる。「なじられる訳あるときはただ黙り 嵐過ぎ去るときを待つだけ」「暖房の全てを切りて出勤す 起きぬ妻への報復と知れ」そうは詠みつつ、さやかさんが10年余り前、乳がんの手術をすることになった際には、「乳房切る 日は十一日と決まりたる われはそれ迄飲まぬと決める」
妻とともに病気と闘う気持ちを素直に表現している。
長年、労働組合運動や政治活動にも携わり、気骨のある面ものぞかせる。
「演説の声を掻き消す 皐月雨 築城基地には傘の花咲く」
このほか、職場や通勤途上で観察した物事を詠んだ短歌など、1万首を超える歌の中から厳選した1300首を収録している。
元々、掛けことばが好きで、退職後からペンネームを名乗るようになったという。原田さんは妻へのざんげの念を込めて、取材の最後にこう詠んだ。
「詠む歌は その場限りのワンシーン 活字となるに 憤り買う」
四六判194ページ、1260円、海鳥社(092・771・0132)刊で、1千部印刷した。行橋市内などの書店に並んでいる。『'10.10.22 朝日新聞』より
吉治氏、短歌の新境地を切り拓いた、の一冊です。
ソファーに寝るわれを詰りて 畑に出し パソコン盾に転寝の妻
妻のする作業すべてを家事と言い われが為しても家事とは言わぬ
届きたる栗剥きおれば 剥かぬ妻 渋皮残さず取れと指示する
もちろん、妻への苦言ばかりじゃなく、しみじみモノや背筋のピンと伸びた歌もたくさんあります。「言葉を磨いて磨いて」詠んだ歌というより、日々のつぶやきをそのまま文字にしたという感じで、今風のツイッターに通じると言ったら吉治さん、怒るかなぁ。
みなさんにぜひ読んでもらいたいのですが、原田氏の手元にももうないそうなので、海鳥社に注文して下さい。
二人とも親なし子なしでずっと二人暮しの原田夫妻。今、二人で晴耕雨読の日々。野菜は吉治さん、花はさやかさん。おだやかとは言い難い二人の会話の微妙なズレがはた目になかなか楽しいですよ。いいコンビです。
渡辺ひろ子(元・酪農家)
『私信 づれづれ草』NO.30(2010.11.24発行)より転載
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