農・人・くらし
NPO法人 農と人とくらし研究センター コラム
口蹄疫
最初に宮崎で口蹄疫が出たというニュースを見た時、これほどの事態になろうとは、誰も思わなかったですよね。10年前の発生の時は何戸かの農家での発生で収束したし、BSEの時も、大騒ぎした割には発生戸数は広がらずに終わったし・・、だから今度も・・・などとみんなどこかで楽観視する気持ちがあったと思います。
ところがどっこい、養豚農家に入ってから、殺処分対象頭数がどんどんどんどん拡大して、聞くのも恐ろしい数になっています。
「殺処分」なんて簡単に表現するけど、牛や豚を一頭殺すのだって、プロじゃなければ、そりゃあ大変な作業です。それが十万頭だ、二十万頭だ、というのだから、もう、想像を絶する事態が宮崎では起きているということです。政府が宮崎県に「殺処分が遅い」と文句を言っているようだけど、そんならお前らが行って、牛や豚を殺してみろよ、です。
殺処分を実際にやっている獣医師や県職員などに不眠や食欲減退などの症状が出ているといいます。そうだろうな、と思います。
もう、20年以上前になるかと思いますが、台湾で口蹄疫が発生して、数週間で台湾全土の畜産を壊滅させたことがあり、その時のビデオを見た記憶があります。ユンボで大きな穴を掘って、そこにダンプに積載してきた牛や豚の死骸をドドッと落とし、ブルドーザーでガーッと土をかぶせて踏み固めていました。
目を背ける光景でした。今、宮崎であれと同じ光景が毎日繰り広げられているのだと思うと言葉もありません。
口蹄疫という病気は感染しても死亡率はそんなに高くなく、治療すれば回復する率は高いといいます。しかし、伝染力が強く、感染すると、餌を食べれなくなるので、やせる・肉質が落ちる・乳量が減るなど経済性が著しく損なわれるという理由から、「一頭でも発生したらその農家は全頭殺処分」と法律で決められているのです。「経済動物」として生まれてきた宿命として、今、宮崎では牛や豚が殺されています。
それは仕方のないことなのだけれど、私たちが好きなものを好きなだけ食べたい時に食べられる、そんな世の中を維持していく陰で無為な死を強制されるいのちがあることを忘れないでいたいと思うのです。
福岡県でも、畜産関係者はピリピリしています。車のタイヤ消毒。靴裏消毒。
でも、空気感染するとか、黄砂に乗って飛来するとかいろいろ言われて、そうなると防御にも限界があるわけで、「来たら来た時のことよ。仕方あるかい」
こういう楽天性が百姓のいいところなのかも・・・と思います。
それにしても、東国原さん、ついてないねえ。知事に就任した直後に鳥インフルエンザ発生で走り回り、その後、彼の頑張りで宮崎県の農産物を全国に売り込んだら、口蹄疫発生で一気に畜産壊滅。
「あ~あ、こんなことなら去年の衆議院選挙に知事やめて出とけばよかったよ」な~んて内心ぼやいているんじゃないのかなぁ。
渡辺ひろ子(元・酪農家)
『私信 づれづれ草』NO.25(2010.5.31発行)より転載
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