農・人・くらし
NPO法人 農と人とくらし研究センター コラム
セツケイカワゲラ
日高敏隆さんという京都大学名誉教授で昆虫学者・動物行動学者の書いた「なぜ飼い犬に手をかまれるのか」という本のタイトルが気になって買いました。その本を全部読み終わらないうちに日高さんの死亡記事を新聞で見て、ショック。
その本に書かれているさまざまな虫や魚や動物たちの生態に驚き、感心し、こんなことを考え、研究して一生を終わらせた日高さんをうらやましくさえ思いました。
その本の中に「セッケイカワゲラ」という虫の話が出てきます。セッケイとは雪渓のことのようです。一センチに満たない黒い虫で、羽も持たない短い足でちょこちょこ歩くしかない小さな目立たない虫です。以下、日高さんの文章を引用します。
セッケイカワゲラの幼虫は水底でじっとしているとはいっても、春の雪解け水・梅雨・夏の豪雨などで下流に流されるわけで、だから、産卵の時期が近づくと、生まれた場所へと歩くのでしょう。数ミリの短い足を動かして、雪の上を二ヶ月以上も歩きつづける黒い小さな虫の営みに感動! そして、そんな虫たちをじーっと見つめ続ける人たちの存在にも感動!
セッケイカワゲラに比べて、人間の営みのなんと薄汚いことか、と思いました。
それにしても、この地球には私の知らないことが多すぎて、知らないで日々を過ごすことがもったいなく思えます。
日高さんの一生、万歳です。
渡辺ひろ子(元・酪農家)『私信 づれづれ草』NO.21(2009.12.23発行)より転載
その本に書かれているさまざまな虫や魚や動物たちの生態に驚き、感心し、こんなことを考え、研究して一生を終わらせた日高さんをうらやましくさえ思いました。
その本の中に「セッケイカワゲラ」という虫の話が出てきます。セッケイとは雪渓のことのようです。一センチに満たない黒い虫で、羽も持たない短い足でちょこちょこ歩くしかない小さな目立たない虫です。以下、日高さんの文章を引用します。
「セッケイカワゲラは十二月ごろ、成虫になって山の沢から雪の上へでてくる。それから彼らはせっせと雪の上を歩き始める。歩くのは天気のいい日だけ。太陽コンパスを巧みに使って、彼らは上流へ上流へと歩く。食べ物は雪の上に落ちている有機物。二月になると、オスとメスが雪の上で出会い、交尾する。やがてオスは死ぬが、メスは歩きつづける。三月ごろ、メスは沢に下り、雪のない水面を探して卵を産む。卵から孵った幼虫は、そのまま秋まで水底で休眠している。脱皮もしないし、大きくもならない。半年ほど経って秋がくると、山の木々の葉が散り始める。葉は沢の中に落ちてくる。すると幼虫たちは急に動き出す。落ち葉を食べ大きくなっていく。そして十二月、初雪が沢を埋め尽くしてしまう前に、幼虫は成虫になり、雪の上に出て行く。それから約二ヶ月、彼らは雪の上をせっせと歩きつづけるのだ。」
セッケイカワゲラに比べて、人間の営みのなんと薄汚いことか、と思いました。
それにしても、この地球には私の知らないことが多すぎて、知らないで日々を過ごすことがもったいなく思えます。
日高さんの一生、万歳です。
渡辺ひろ子(元・酪農家)『私信 づれづれ草』NO.21(2009.12.23発行)より転載
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