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農・人・くらし

NPO法人 農と人とくらし研究センター コラム

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内戦の地にも人々の暮らしがある(下)

 研修生たちはその後も研修を続け、全員無事に2ヶ月半にわたる研修を修了した。最終日の11月9日、JICA東京でコース全体の評価会がもたれ、私は研修生とともにその席につく機会をもった。このとき、バリさんは、日本で多くのことを学んだが、自分にとって最も印象深かったのは、岡谷での環境点検のとき、射撃場の跡地で区長さんが語った言葉だった、とふりかえった。鉛の弾が埋まった跡地利用について、土壌の鉛汚染を孫の代に残さない処置を考えている、と区長さんは説明した。自分たちさえ良ければいいのではなく、次の世代のことまで考えていることに、バリさんは衝撃を受けたという。
kibou.gif アフガニスタンが今どんな状況に置かれているのか、私には想像することすら難しい。研修の最後の数日間、研修生は帰国後に実践するという想定の「生活改善活動計画」をそれぞれ立てることが課せられていて、私は何人かを手助けする役目を引きうけた。その中にアフガニスタンからのもう一人の研修生のバレゾさんがいた。活動対象に彼女が選んだのは、FCDC(女性コミュニティ開発委員会)という村の女性リーダーたちの組織である。彼女が描いたプロブレムツリー(問題分析系図)は、女性たちが置かれた困難な状態を反映して、延々とどこまでも続いていた。村のFCDCのメンバーは、定期的な会合を自分たちではもたない → 開発委員会の目的も会合の目的も知らない → 会合で自分の意見を言わない → 社会活動家に依存している → 自発性に欠ける → 問題を見極める機会がない……。
 内戦の地にも人々の生活がある。戦争状態が何年も続き、今をいかに生き延びることだけを考え、将来を思うことすら儘ならない人々がいる。そんな過酷な状態だからこそ、「明るい」将来のビジョンを描くのは容易でないと同時に何よりも必要なことなのだろう。アフガニスタンからの研修生の言葉を、私はそのように聞き取った。

片倉和人
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農と人とくらし研究センター

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