農・人・くらし
NPO法人 農と人とくらし研究センター コラム
秋(9~11月)
このむらの稲刈りは、9月上旬が殆どで、誰かが刈り始めると競うようにアッという間に田んぼから稲が消える。我が家は、少しでも稔実を良くしようと稲穂を眺めながら刈り取りを決めていた。例年9月中旬である。ただ微妙な点は、この時期は秋雨と台風である。1992年から2003年までの間に、台風は上旬に2回、中旬に3回来ている。このむらの人たちは、例年の天候を睨んで稲刈りを決めているようだ。
私の少年期は、稲刈りは10月、ハサ干、脱穀、籾干と12月に入り、籾摺りは冬の師走の仕事であった。籾摺りはこのむらの青年団の請負仕事で、石油発動機の籾摺機を1軒1軒持ち回って仕事をしていた。石油発動機のトントンと言う単調な響きが懐かしい。この頃、周囲の山々に初雪が降った。
こうして、秋は、稲の収穫、秋冬野菜の播種、定植が一段落するころ、山々が秋の色を見せ始める。山の紅葉は標高500m位を境にその色の鮮やかさが違う。我が家は、標高300mのところにある。屋敷地に山から採ってきて植えた幼木のモミジ、コマユミ、アブラチャン、クロモジも育って秋の色を見せるが、その年の夏の天気によって色合いが違う。
しかし山々の秋は見事である。檜、杉の濃緑に囲まれた中にある欅が秋の午後の陽に映える黄色の葉色など日本画の世界である。この時期、周辺の山々をドライブして回るのが年の行事であった。
我が家の秋の行事に、毎年90kgから120kgを精米して、新米を親戚、友人に贈ることである。1年間無事に百姓ができたという報告であった。そして、木枯らしが吹いて山が鳴り始める頃、夏に漬け込んだキュウリの粕漬(奈良漬)の本漬けがある。これも妻久枝の貴重な年行事の一つである。
谷底のこのむらに秋の終わりに山が鳴り始める。木の葉が谷一面、吹雪のように舞う。木々が一挙に裸になる。すごい霜が降りる。分厚い氷が張る。家の硝子戸の結露が氷の結晶になって花が咲いたように見える。こうして、冬を迎える。
小松展之『あわくら通信』第34号(2008.5.21発行)より転載
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