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農・人・くらし

NPO法人 農と人とくらし研究センター コラム

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夏(6~8月)

 山の春は息吹の中で、百姓の身は、稲の苗つくり・田植、畑作の段取り、春夏野菜の作付けなど忙しく過す、そして夏。
 山の夏は、山々の緑が一段と濃くなってくる。身近に見える山の斜面の杉・檜の濃い緑は、圧迫感すら感じる。山の夏は、杉・檜の濃緑色に沈んでいると言っても良いくらいだ。
 この時期、野良は、草との勝負である。草刈の日々という感じになる。このむらの中では、1日中、何処かで草刈の刈払機のエンジン音が響いている。
 水田の畦畔率40%という我が家の水田は、米を作るより草を作るといってよいほど、法面の実面積は水張面積を超えている。水田では、田植前、出穂前そして稲刈り前の3回は最低の草刈回数である。さらに、畑の畦、果樹を植えた畑の下草の刈り取りがある。
 その上、屋敷周りである。山村の屋敷は傾斜地にあるので道路に面している所は石垣を組んであるが、他の部分は、裾のところだけ土留めの石垣だけで掘り切りである。年に3回は全面的に草を刈らなくてはならない。
 こうして、夏の6・7・8月は、常時、何処かで草を刈っているという感じになる。その上、水田では、稗との戦いがある。無農薬稲作ということで除草剤を使わない稲作は、田植をしてから30日以内に2~3回の稗取りの八反返を掛ける。それでも残った稗は、稗が穂を出す前に、手取りで1株1株抜いて回る。結構畦畔に山積みになる。勿論、畑の野菜の中の草取りもある。
 この時期、朝夕の田んぼの見回りは日課である。朝、用水口を開けて2時間ほど水を入れて閉める。棚田で水持ちが悪く、しかも用水温が真夏でも12度ぐらいと低いので、短時間に湛水して水口を止める。こうして、7月下旬から8月上旬は稲の出穂期で、この年の稲作はあらまし終わったという感じになる。
yasai3.jpg 夏野菜:キュウリ・トマト・ナスは、5月はじめに定植、収穫がはじまる。キュウリ・トマトは、無農薬のため、雨よけ栽培でないと病気で収穫皆無になる。キュウリは、第1作目の開花が始まる頃、第2作の種を蒔く、第2作の開花が始まる時、第3作の種を蒔く、こうして4作ぐらいつくり、秋まで収穫する。
 キュウリは生食以外全て塩漬けにする。これはもっぱら妻久枝の仕事になる。盛期には毎日毎日の塩漬けで、彼女が悲鳴を上げるぐらいになる。しかしこれは、彼女の大切な仕事で、秋に、全て粕漬け(奈良漬)にして歳暮に友人知人へ送る。
 夏は、妻久枝にとって大仕事が、蕗の伽羅ぶきの仕上げ、梅干つくりがある。帰農した当初は、親戚などから生梅を求めたが、梅の苗木を植え、育成した結果、150kgも獲れ、全量を梅干にした。
 こうした夏は、春からの野良仕事の重なりで、毎年腰痛症を起こし、1週間ぐらい寝込んでいる。これは毎年の行事みたいになっている。
 この時期はこのむらの出事が多い。道普請(道路愛護日)、川普請(河川愛護日)、お滝様夏祭り、愛宕様、そして夏休みの子供向けヒラメ(山女)掴み取り大会がある。これらは、日ごろ顔を会わせることが少なくなったこのむらの人たちの交流の場にもなっている。
 夏の終わりは、お盆である。8月に入ると墓地の掃除をして、墓に花(しきみ)を山から採ってきて供える。かつては、山の採草地や水田脇にオミナエシ、キキョウ、カルカヤなど盆花が自生していたが、今は、山は植林、水田は基盤整備で面影はない。こうしてお盆の3日が過ぎると、急に、秋めいた風が吹くようになる。そして、秋野菜の種まきがはじまる。

小松展之『あわくら通信』第34号(2008.5.21発行)より転載
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