農・人・くらし
NPO法人 農と人とくらし研究センター コラム
「農村生活」時評④
今年のテーマは、「次代に伝えるべきもの-農村の仕事と暮しの中から-」で、デザイン会社経営者でスローフード宮城会長の深野せつ子氏の「エコな暮らしと伝統料理」という基調講演、「郷土の伝承活動に取り組んで」をみやぎの食を伝える会代表の佐藤れい子氏と「農家レストランを開業して」を「もろや」店主の萱場市子氏が事例報告されました。
深野講演は農には無縁だった仙台市民がいかにして農とその基盤である自然を発見したか、今年11月、メキシコで開かれるスローフード世界大会の目指す目標についてのお話だったが、こういう都市民の動向・意見が農林水産業の死命を決するというか、再生方向を示すことを痛感した。氏は農業は金額など経済的指標で測れないといわれたが、その日の朝、日経紙上で「GDPでわずか1%しかない農林水産業」という記事を見たばかりなので、とりわけこの発言が印象深かった。この席上、宮城県元経営専技の東海林さんから「図書」(平成6年)の、黒岩徹「スローライフ・秘法七」というコピーをもらい、そこでお話とあわせて読み、すこしづつですが地球人の生活意識が変わってきているように思いました。単なる理念だけの認識ではなく、私たちの生活内容で変化しなければ今の事態は動きません。
佐藤報告はみやぎの郷土食の記録「ごっつぉうさん」の編集・出版の経過と次世代への引継ぎ活動のあらましでしたが、元生改が中心の会のメンバー自身が、食育として小学生などに楽しく調理を教える活動の紹介が印象的でした。この子らの親世代はなにかと忙しく、伝統の話や生活技術は入りにくいが、いわば世代を越えるところに妙味があるようです。萱場報告は自家産食材はいうまでもなく、自宅と庭を活用した文字どうりの「農家」レストランの実践の話でしたが、その技術は“4Hクラブ・生活改善グループの活動による”と、さらりといわれたので、私は討議の時間にそのあたりをしつこく伺いました。
萱場さんがまだ、子育て真っ最中の時、お義母さんが病に倒れたのでうまく生活技術を受け継げなかったそうです。その時、御夫君が勉強しなさいと学習の場に送り出してくれ、その仲間との交流が今の運営の基礎だ、ということでした。経営主と息子が野菜生産を担当し、その生産物をレストランに活用するというのが、経営の基本ですが、都市近郊という立地を活かした野菜の宅配活動も大事な経営の柱だそうです。その宅配グループは生改グループの発展した姿ということがこの経営の背景のポイントでしょう。もちろん今も現役の普及員さんと結びついている訳ですが、やはり、20年以上の歴史のある生活面での組織化ということが、時代をこえて課題ではないでしょうか。
森川辰夫
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