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農・人・くらし

NPO法人 農と人とくらし研究センター コラム

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「農村生活」時評②

markets.jpg 7、8月という季節はヨーロッパではバカンスらしい。異常気象のせいか、地球温暖化のひとつの姿か、ヨーロッパ各地の猛暑が伝えられるが、ただそのせいだけでなく、労働慣行というか冬の長い地域の社会全体として、夏のバカンスが定着しているのだろう。先日の外電によると、バカンスのためにパリの街が空っぽになり、その空間をアメリカからの観光客が埋めているという。そしてスーパーに慣れた人々が物珍しく、食料品や日用品を並べた市街地の路上のいちばを見物しているという。日本のテレビにおける諸外国紹介の番組でも、いちばが登場することが多い。外国を知るということは市民の暮らしを知るということであり、それにはいちばがもっともふさわしい。
 スーパーや大型店が流通を支配していることは日本でも同じである。「流通革命」と称してアメリカ型の市場を目指して到達した姿が、今の日本である。その日本で昨今、農産物を中心に産直や素朴な路上販売、伝統的な自由市場、公設施設における生産者の直接販売などが盛んになった。いわば農業サイドの話題としては唯一といって良いほど、生彩をはなっている。この種の活動が一切、世間に知られず埋もれたままだったら、メディアもネタ不足で困っただろうが、他ならぬ行政も施策の目先を変えることができずに悩んだことだろう。
 この分野の活動を支えている主役はいうまでもなく、農村女性である。今では表現の仕方としては評判が悪いが、もっと簡単に昔風にいえば、「農家主婦」の皆さん方のパワーの賜物である。もう少し、リアルに表現すれば、これらの活動の源泉は戦後の農村女性を組織した生活改善グループ活動であり、現在の主役たちは偉大な先輩の遺産を受け継いだ二代目、三代目たちである。そして初代から当代までを直接、指導し、この分野の農業生産と組織の両面にわたり基盤を築いてきた人間は、かつての生活改良普及員である。
 男性方は主力の農業生産部門、米とか畜産の生産力向上に死力を尽くしてきた。この活動を家族経営の一員として支えてきた女性は、その外に自家菜園を作ったりささやかな加工品をつくったり、あまり物を販売したりして暮らしを支えてきた。これらは元々、何かに特化することもなく、生活本位の営みであった。それとても訓練なくして社会化することはできない。この地味な小規模な活動が経済社会の変動で、表に現われたが、もとより、実力のある人々で、当然の結果であった。
 世間の一部には、戦後の日本の民主化を否定する風潮があるが、この社会が成し遂げた近代化は巨大な遺産である。親や先祖のことをバカにするのは子孫の特権かもしれないが、無知はいただけない。生活改善の仕事は広範囲で、活動の性格上あまり知られていないが、体験者が語ることも大事である。時節柄、戦争体験の継承のはなしを聞くが、わずか二〇年、三〇年前の出来事もはっきりさせておく必要がある。

森川辰夫
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農と人とくらし研究センター

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