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農・人・くらし

NPO法人 農と人とくらし研究センター コラム

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環境保全のために川の草刈?

hotaru.gif 6月の初め、集落の班長さんから連絡がありました。「○○日の夜7時から公民館で寄り合いがあるで来てくんせえ。来た人にはみんなに草刈機の刃が貰えるそうやで」。「何の相談やろ、触れてきたのは組の班長さんやで、農協の話やないし、なんで歯が貰えるんやろ」家人と色々考えても訳がわかりません。「まあ行ってみりゃわかるやろ」ということになりました。
 ○○日の夜、寄り合いから帰ってきた家人が見せてくれたのは「農地・水・環境保全向上対策事業」のパンフレットでした。そして「24日の日曜日に別所(わが集落名)総出で川の草刈をやることになった、今日貰ってきた歯はそのためやで」と言います。
 この事業は私がまだ勤めていた時に、19年度からの実施に向けて、地区を選定したり、事業内容を理解してもらうために、農林事務所のほうから農業改良普及センターへ依頼があって、何度も検討会をしていたものでした。「ははあ、いよいよ始まったのだな」と思いました。家人に「誰か、県とか市から来て説明した?」と聞いたら、「いや、K地区のTさんが来て説明しただけで、他には誰もおらん」と言うこと。「事業のことはどんな説明やった?」と聞いても「詳しいことはわからん、これ読んどけと言うことやった。そやけど、とにかく24日は朝8時から草刈や」。
 24日は8時に草刈機を担いで家人が出て行きました。すぐに川のあちこちでブーンと草刈機のエンジンの音が響き始めました。その日は市の森林組合の総代会も9時から「健康の森」で行われることになっていて、草刈に出かけた家人に代わって、私が総代会に出席しました。行ってみるとO地区の総代さんが来ておられて、雑談されていましたが、そのうち「今朝はもう一仕事済ませてきた、部落中で川の草刈をやってきた」と言う話が聞こえてきました。O地区もわが集落と同じだったのでした。
 総代会から帰ってきたら、目の前の川はすっかり草が刈り取られていました。葦や菖蒲やクレソンの草むらはきれいになくなって、川はすっかり丸坊主。今年はずいぶん蛍が増えてきたのに、その棲みかがなくなっていました。
 市の環境経済部長はこの事業について「19年度は市内の5ヶ所の約123.3ヘクタールの農地をモデル地域とし、事業費約500万円を予定している。事業内容は畦畔や農地の草刈、水路の泥上げ、用排水路の点検補修、生物調査や花植えなど、地域が共同して環境保全を推進する事業としたい」(T市議会議員さんの議会活動だよりNo65より)と述べておられます。「環境保全のためなら、蛍やその他の昆虫や魚の棲みかとなる川の草を刈ることはないのに、なんで川の草刈やの」、家人にそう言うと「そういえばそうやな、ほんでもあの時は刃が貰えたで、みんな素直に草刈るんやと思ってしまったんやなあ、今から考えるとおかしいなあ」。棲みかを奪われた川での生物調査の結果がどのようなものであるか、大いに期待したいものです。

『ひぐらし記』No.16 2007.8.20 福田美津枝・発行 より転載
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