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農・人・くらし

NPO法人 農と人とくらし研究センター コラム

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敗北宣言

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 私、酪農を廃業しました。6月5日に牛たちをすべて処分(酪農家に買い取ってもらえる牛は買ってもらい、買い手のつかない牛は屠畜場へ)しました。一頭も残さずすっぱりと手放して、酪農家としての私は終わりました。
 「楽農ぐらし」の中でこの事態を予想させるようなグチが急増していたと思いますが、グチグチ言いながら、でもまだ何とかこの仕事にしがみついていたいという思いがありました。
 体力的にはまだまだ5年や10年は…とも思っていました。
 実は「やめる」と決断したのは5月20日過ぎてからのことです。
 5月20日に4月分の乳代の計算書が出ます。それを見た途端に切れかかってそれでも辛うじてつながっていた気持ちの糸がプツンと切れました。
 半年ずっと赤字でした。赤字の額自体は大きな金額ではないけれど、それでも一ヵ月休みなく働いて、貯金を下ろして持って行かなければならないなんて、いくらなんでも働く意味がない。
 これから夏乳といって、夏場は乳価が少し上がるので秋まで待って廃業したら…という忠告もありました。でも、夏乳といっても以前のような価格は望めない現状だし、それで機械の一つでも壊れたら、もうアウトです。
 それに何より気持ちが途切れてしまったのが大きいわけで、こういう気持ちになった時に決断する方が後で後悔しなくてすむだろうと思いました。
 「やめてどうするん?」という問いには「やめんでどうするん?」と答えて、後はさっさと事を進めて、きれいさっぱり「終わり」ました。
 酪農を始めて丁度30年です。先の見通しなど何もない廃業です。退職金もなく失業保険もない自営業の末路は哀れで、これからどうやって老母を養いながら自活していけばいいのか、考えると暗くなるので、とりあえず少しの間、ぼんやりと日を過ごすつもりです。まぁ、一年くらいはかろうじて食える蓄えが残っているうちでの廃業だったので…。
 本当はこんな形で酪農人生を終わりにしたくはなかったです。とても悔しいです。
 日本の農業政策が小規模農家をつぶしてしまうという強い意思をもってしまった中で、女ひとりの零細酪農家は真っ先にへたってしまったわけで、実に実に悔しいです。
 ガランとした牛舎。さて、この牛舎の処分をどうするか、今、苦慮しています。
 このままにしていると固定資産税がずっとかかるわけで、だれか倉庫としてでも借りてくれないかと思うけれど、借り手買い手がなければ解体しなければなりません。解体するなら、クズ鉄が高騰している今がチャンスで、鉄の値が下がったら、解体費用がまた莫大なものになるよ、と脅かされます。
 まだしっかりした大きな鉄骨の40頭牛舎なので、解体してしまうのはもったいないのだけどねぇ。
 牛舎の他にも、酪農にしか使わない機械などいくつかあって、その処分も考えなくてはいけないし、雑務がまだまだたくさんあります。
 しかし、まぁ、牛がいた頃に比べたら目茶苦茶にヒマで、しかも、生活の時間が全然違ってしまって、困っています。
 特に夜が問題で、なにしろ、深夜に風呂に入って、それから晩ご飯食べて、寝るのが2時3時という暮らしを30年続けてきたのです。
 それが突然、まだ外が明るいうちに風呂に入り、7時頃に晩ご飯です。調子が狂って、どうもまだうまく生活のリズムが作れません。

渡辺ひろ子『私信 楽農ぐらし』NO.116(2007.6.15発行)より転載
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