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農・人・くらし

NPO法人 農と人とくらし研究センター コラム

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「気違い農政周游紀行①」 部落の側から農政をみると

bags.jpg 誤解を招きかねない表題なので、転ばぬ先の杖ではないが、一言弁明をお許し願いたい。気づかれた方も多いと思うが、表題は、きだみのるの有名な本の題名をもじっている。その『気違い部落周游紀行』自体、閉門に処せられたフランス・サヴォアの騎士グザヴィエ・ド・メェストルの「居室周游紀行」に倣ったものだそうで、戦中から敗戦直後にかけて日本に蟄居を強いられた著者が、疎開先の東京都下の一山村、「日本で一番小さな部落」の生活や住民の精神構造を、新鮮な驚きをもって活写した本である。きだは、いわば外国人旅行者のような外からの目と、未知の世界に入ってフィールドワークを行う人類学者の目をもって、食うや食わずの時代の日常に生きる人々を観察し、古代ギリシャ・ローマか中世フランスの書物に模して、登場人物をみな英雄や勇士と名づけて紹介した。彼らの立ち振る舞いの中に日本人なら誰もがもつ一般的なものを見たからである。
 私は故郷を出て他所の地を30年余り旅して、無事故郷に帰還した。自分の生まれ育った部落にである。18歳までそこで過ごしたということは、私という人間の大半はきだが描くような部落で形成されたといってよい。しかし、きだのように外からの目をもって、もう一度自分が生まれ育った部落の人々のくらしを見てみようと思ったわけではない。私が再びくらし始めた生活実感の側、部落にくらす人々の精神構造の側からみたら、今の農政の姿はどのように写るのか。自分が昨年まで15年余り働いていた外の世界を、良くいえば新たな視点をもって、要するに一つの偏見をもって、もう一度ふりかえってみようと思ったのである。部落の側から農政をみたらどのように見えるのだろうか。
 といっても、私が長く働いていたのは、行政改革でばっさり切り捨てられた外郭の研究機関であり、農政の末端ではないとしても、傍流に座を占めていたにすぎない。だから私が垣間みた農政の世界はごく限られた狭いものである。狭い世界ではあるが、部落の生活のなかに埋没して思い出せなくなる前に、せめて今ある記憶だけでも残しておこうと思いたった次第である。
 60年前に書かれた『気違い部落周游紀行』が私には現代の日本の姿とダブってみえる。
 「目を押せば二つに見えるお月さま」

片倉和人
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農と人とくらし研究センター

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